狛犬瓦版

趣味について書くブログ

仮面ライダーゼロワンを語りたい

 いやあ、面白いなあ『仮面ライダーゼロワン』! 毎週日曜日が楽しみで仕方がない。

 

 さて、19年続いた平成ライダーの歴史は『仮面ライダージオウ』で幕を閉じ、新たな令和ライダーの先駆けとして、ニューヒーローゼロワンが登場した。『仮面ライダージオウ』が平成ライダー総決算としてお祭り、感謝祭的な作品だったのに対し、『ゼロワン』はその逆、新たな時代の始まりを告げる鏑矢である。

 

 言うまでもないがこれは凄まじい大役だ。昭和ライダー、そして仮面ライダーという伝説の第一走者である「仮面ライダー1号/2号」。平成ライダー1号であり、今なおその高いクオリティで数多の人々を魅了する『仮面ライダークウガ』。これから先、仮面ライダーについて語るときは、必ずこの偉大な二作品と『仮面ライダーゼロワン』は同列に語られる。生半可な出来は許されない、それは今後の玩具売り上げにも関わる。

 

 そして……東映は高まるファンの期待にこれ以上ないくらいのストレートで応えてくれた。

 

 メイン脚本は『仮面ライダーエグゼイド』で好評を博した高橋悠也。監督には『ルパンレンジャーVSパトレンジャー』や『ジオウ』アギト編で一躍その名を轟かせた杉原輝昭を起用。そして音楽は『仮面ライダーゴースト』の坂部剛

 

 平成ライダーをこれまで追ってきた身としては、唸らざるを得ない完璧な布陣だ。「傑作を作ってやる」という断固たる決意が滲み出る。

 

 ライダーのデザインも素晴らしいの一言に尽きる。主役ライダーであるゼロワンは、バッタモチーフという仮面ライダーの王道中の王道を走りつつも、メインカラーは蛍光イエローというかなり外連味のあるものだ。これまた王道の「涙ライン」を完備しつつ、仮面要素をこれでもかと強調した目を引くデザインである。関節部にほとんどをアーマーを装着していないので、スーツアクターが動きやすいのが一目でわかる。

 

 そして何より変身音声。

 

「Jump! オーソライズ 『変身!』 プログライズ! 飛び上がライズ! ライジングホッパー!!  A jump to the sky turns to a rider kick」

 

 震えた。平成二期に代表される、ともすればうるさいとも取られかねないような個性的な変身音声と、平成一期のようなスタイリッシュさの見事な融合。新時代の夜明けを見た。

 

 そして迎えた本放送。幸いなことに公式は1話と2話をYoutubeにて無料配信している。

youtu.be

youtu.be

 

 そこには、素晴らしいクオリティの特撮作品があった。

 

注意! ここから先は『仮面ライダーゼロワン』本編のネタバレが含まれています! ネタバレが苦手な方は上のリンクから本編を視聴した後にお読みください!!

 

 第1話。冒頭から脚本の妙が光る。飛電インテリジェンスのPR映像を流すことによって、視聴者に簡潔に世界観を伝えつつ、そのニュースを読み上げるキャスターすらもヒューマギアであることによって、設定の開示とその補強を一瞬でやってのけた。

 

 次の遊園地のシーンも実にニクイ。或人が発した「ヒューマギアにお笑いは分からないでしょ!」という言葉は視聴者の気持ちを代弁している。そしてその直後に登場する腹筋崩壊太郎が見事に観客の笑いをとることで、ヒューマギアが一般的なSFと比べて極めて性能が高いことをこれでもかと描写してのける。このギャグが地味に面白いのもより説得力が増すポイントだ。

 

 とにかくまあ、構成が上手い。キャラクターがそれぞれどのような考えを持って動き、どのような評価を受けているのかがこの短い放送時間の中で手に取るようにわかる。

 

 それ故に、飛電或人が「笑うなよ!」と叫ぶシーンの熱量が凄まじい。たかだか10数分しか見ていない男の背中に、バックボーンと説得力を感じ取れる。高橋文哉氏の熱演もそれを強力に後押しする。

 

 そして待ちに待った変身シーンだ。特撮ものの第1話において、もっとも盛り上げるべき場所というのは変身シーンと必殺技を使うシーンなのだが、ここでその前半は完璧に達成した。

 

 そしてゼロワンの戦闘シーン。ダイナミックな格闘に『ルパパト』で培われた多彩なカメラワーク。気合の入ったCGはくどくなり過ぎず、それでいてゼロワンの軽やかな戦闘を鮮やかに魅せる。戦闘BGMとして初お披露目となった主題歌、「REAL×EYEZ」も軽快かつ気合の入ったシャウトで戦闘を盛り上げた。

 

 必殺技、「ライジングインパクト」は『エグゼイド』を思わせる大胆な文字が画面に表示されるスタイルで、こちらもまた非常にインパクトが強い。

 

 戦闘終了後、或人が「人を笑顔にするのはお笑いだけじゃない、ヒーローとしてでもできる」と気づくシーンは正に王道で、これからの主人公としての活動に強い説得力を持たせるだろう。

 

 もう満点である。心の中に飼ううるさいオタクも白旗を揚げた。ヒーローものの1話として、パーフェクトといって差し支えない。令和ライダーの先駆けとして、これほどまでに相応しいものがあるだろうか。次回への引きを持たせつつ、単一のエピソードとしてきっちり完結しているのも見逃せない。

 

 続く2話もこれまた白眉の出来だ。個人的な好みで言わせてもらえば、1話よりも断然こちらの方が好きだ。

 

 2話で主にスポットが当たるのは二号ライダー・不破諫。彼の思想・信条にフォーカスしていく過程で、それと対になるように主人公たる飛電或人の掘り下げを行っていく。

 

 同じ事件で共に生き残りながら、全く違う想いをヒューマギアに抱く両者。その対比は「ヒューマギアは人類の夢だ!」/「ヒューマギアは人類の敵だ!」と叫びながら変身するシーンで結実する。『555』の『夢の守り人』を思い出させる名シーンだ。

 

 無論、このシーンで最大瞬間風速が発生するのは、脚本の妙技である。片や「じゃ、俺の家族みたいなもんだ」とまで言ったヒューマギアが暴走、それを撃破しなければならないという極限状況に置かれた上でなお「夢」だと言い切る。片やヒューマギア、ひいては飛電インテリジェンスに対する不信感と憎悪をぶちまけた上で、凄まじい形相で無理やり変身アイテムのロックを解除する。この積み重ね。オタクはこういうの大好き。

 

 港のコンテナで激闘を繰り広げる不破/仮面ライダーバルカンと、壮絶なバイク戦の末にたまたま同じ港にたどり着いてしまうゼロワン。ゼロワンが悲痛な声で「お前を倒せるのはただ一人……俺だ!」と決め台詞を叫びながらマギアを撃破し、マギアをコンテナに縫い付けてから本命の一撃を放つという執拗さと憎悪を見せつけながら撃破するバルカン。両者は貫通したコンテナ越しに対面し、ゼロワンは煙に乗じて姿を消す。

 

 あ~~~~~~~~好き!!!! こういうの大好き!!!!!! なんだこれ、好きのフルコースなのか!? カッコいい、カッコよすぎるだろ!!!! 

 

 ワカっている。制作陣は確実に男の子が大好きなポイントをワカっている。ワカった上で、そのシーンに持っていくにはどのようにイベントを起こすべきか、どうしたらそのシーンに視聴者はカタルシスを感じるのかを冷静に計算し、それを叩きこんでくる。

 

 これ本当にまだ2話なんだよな!? もう15話くらいの気がするぜ!!!

 

 制作陣のワカっている攻撃は止まらない。3話においてはSFファンのツボを的確に刺激し、4話では或人と不破の関係性にフォーカス。変身者バレという一大イベントを僅か4話で消費するという暴挙ながら、まー面白いんだこれが。2話で魅せた対比、そしてそれから繋がる「こいつらなら間違いなくこうする」という説得力がすごい。

 

 不破がただの憎悪に任せた復讐者ではなく、筋の通った漢であることを描写しつつ、「今日は非番だ」や或人のつまらないギャグに爆笑しかけるお茶目な点をアピールするこの絶妙なバランス感覚もまたたまらない!

 

 そして或人のキャラクター造形もまた絶妙だ。基本的に理想のヒーローとでもいうべき精神性を持っている彼だが、その背後に無自覚な独善も見え隠れする。ヒューマギアに心を感じているように描写しながらも、「ニギローがどれかわかんねぇ……!(=ニギロー以外なら破壊してもいい)」に代表されるようにヒューマギアをあくまで道具として認識しているようなフシもある。いやあ、たまらん。

 

 まだ4話しか放送されていないというのが信じられないくらいの情報密度、瞬間風速である。

 

 そしてここには明確に『エグゼイド』の血を感じ取ることができる。エグゼイドも『Somelieの極意!』(素晴らしいセンスだ!)から加速度的に物語が進行し、毎話クライマックスといっても過言ではないほどの瞬間風速を誇る作品だった。

 

 そんな『エグゼイド』の難点としては、序盤が少々キツイことにある。それぞれのドクターたちの描写をしつつ、新玩具を毎話出すというのは作劇的にかなり圧迫されている印象を受けた。逆にそれから解放された後が「ノルマ達成したから全力で行くぜ」と言わんばかりのフルスロットルなのだが。

 

 そして『ゼロワン』はこれを周到に解決しにかかってきている。まず1話完結としたことによってテンポが非常に良くなった。新フォーム・新ライダーを登場させることについても、作劇的に理由付けを行うことで無理なく適合させている。ここら辺の工夫は『ルパパト』に通じるものがあるなあと言った印象だ。

 

 そこには東映が今までの特撮で培ってきたノウハウを融合・昇華させようという野心的な試みを感じることができる。

 

 豪胆にして堅実、相反する二本の軸で視聴者を翻弄し、狂喜させる『仮面ライダーゼロワン』。我々は新時代のヒーローの誕生を、この目で目撃しているのだ。